2026年8月10日時点で、AnthropicのClaude APIを選ぶなら、迷ったときの出発点は Claude Sonnet 5 です。まずSonnet 5を自社の入力で評価し、品質不足の損失が大きければOpus 5またはFable 5、品質を保ったまま待ち時間や費用を下げたいならHaiku 4.5を同じ条件で比べます。モデル名の印象だけで「上位ほど得」と決めるのではなく、処理ごとの合格率、待ち時間、実際に請求されるtoken数で判断するのが要点です。
AnthropicのModels overviewに掲載されている、Anthropic直提供のClaude API向け4モデルと正式なModel IDは次のとおりです。
textClaude Fable 5 claude-fable-5 Claude Opus 5 claude-opus-5 Claude Sonnet 5 claude-sonnet-5 Claude Haiku 4.5 claude-haiku-4-5-20251001
Haiku 4.5には短いID claude-haiku-4-5 もあります。なお、4.6以降の日付なしModel IDも、自動で将来の最新版へ切り替わる別名ではありません。Model IDs and versioningが説明するように、特定バージョンへ固定されたsnapshotです。デプロイ前には、コピーしたIDと廃止予定を別々に確認してください。
この記事の対象はAnthropicが直接提供する Claude API です。Web版Claudeのプラン、Claude Codeの契約、Amazon Bedrock、Google Cloud、Microsoft Foundryでは、名前、提供状況、価格、廃止日が別管理になるため、同じ比較表には混ぜません。
比較表の数字を読む前に、5つの違いを押さえる
スペック表は候補を絞る道具であり、自社処理の勝者を決める実測結果ではありません。表を見る前に、判断を誤りやすい概念を整理します。
- 能力の位置づけと成功率は別物です。 Anthropicが高能力と位置づけるモデルでも、自社の短い分類が必ず改善するとは限りません。同じ入力、同じ合格条件、同じ計測方法で比べて初めて、切り替える理由になります。
- API料金は入力単価だけでは決まりません。 請求対象の入力token、出力token、thinking token、prompt caching、Batch API、ツール利用などの合計で見ます。
- context windowと最大出力は別の上限です。 1M-token contextは、1回のリクエストで扱える文脈容量の上限を示すもので、毎回1M tokenを無料で送れる意味ではありません。128kの最大同期出力とも別です。
- 同じ文章でもtoken数は変わり得ます。 AnthropicのPricingによると、Claude 4.7以降の新しいtokenizerは以前の世代より同じテキストで約30%多くtokenを生成する場合があります。これは固定30%の値上げではなく、内容と処理によって変わる概算です。
- Model IDとライフサイクルは別に管理します。 固定されたIDを使っていても、Active状態が永続するわけではありません。移行先、切り戻し先、廃止予定を記録しておく必要があります。
Claude APIの4モデルを1枚で比較する
公式モデル一覧では、Fable 5、Opus 5、Sonnet 5のcontext windowは1M token、最大同期出力は128k token、Haiku 4.5は200k / 64kです。同ページの「slower」「moderate」「fast」「fastest」は相対的な公式ラベルであり、秒数の実測値や応答時間のSLAではありません。
料金はAnthropicのAPI Pricingに基づく、100万token(MTok)当たりの入力 / 出力の米ドル標準単価です。税、data residency、ツール利用、prompt cache、Batch、クラウド事業者の上乗せは含めていません。Sonnet 5には 2026年8月31日まで $2 / $10 の導入価格があり、2026年9月1日から標準の $3 / $15 になります。
| モデル / Model ID | Anthropicによる位置づけ | context / 最大同期出力 | 相対速度 | 標準料金(入力 / 出力、USD/MTok) | thinking |
|---|---|---|---|---|---|
Claude Fable 5 claude-fable-5 | 広く提供されるモデルの中で最上位の能力 | 1M / 128k | slower | $10 / $50 | adaptive thinking |
Claude Opus 5 claude-opus-5 | 複雑なエージェント型コーディングや企業向け処理 | 1M / 128k | moderate | $5 / $25 | adaptive thinking、既定のeffortはhigh |
Claude Sonnet 5 claude-sonnet-5 | 速度と知能の均衡 | 1M / 128k | fast | $3 / $15 | adaptive thinking、既定のeffortはhigh |
Claude Haiku 4.5 claude-haiku-4-5-20251001 | 最速、低コスト側 | 200k / 64k | fastest | $1 / $5 | manual extended thinking |
この位置づけはAnthropicによる公式説明で、独立ベンチマークの総合順位ではありません。Fable 5がすべての処理で最良、Haiku 4.5が常に最短応答、という意味には読み替えないでください。
期間限定価格を標準価格として予算化せず、請求期間をまたぐ場合は両方の単価で見積もります。
Sonnet 5から始め、証拠が出たときだけ候補を替える
用途名だけでモデルを固定すると、同じ「コーディング」や「問い合わせ対応」の中にある失敗コストの差を見落とします。最初にSonnet 5で基準を作り、上位または下位へ動く条件を先に決めておくと、比較がぶれません。
品質不足の損失が大きいならOpus 5とFable 5を試す
複数ファイルにまたがる修正、長時間のエージェント処理、誤りを人が見逃したときの損失が大きい生成では、Sonnet 5が合格条件を満たさなかった入力だけを抽出し、Opus 5とFable 5を同じ評価セットで試します。比較するのは「賢そうか」ではなく、合格率、修正回数、途中失敗、平均出力長、p95待ち時間、1件当たりの実請求額です。
Fable 5を候補に含める前に、Fable 5とMythos 5の公式案内で安全分類によるrefusal(応答拒否)、請求、データ保持条件を確認してください。Fable 5は一般提供されていますが、Mythos 5はProject Glasswingの承認顧客向けであり、通常のセルフサービス比較には含めません。
さらに、公式Migration guideによれば、Opus 4.8からFable 5へ移ると単価は $5 / $25 から $10 / $50へ倍増し、30日間のdata retentionが必要です。互換性のないZDR(Zero Data Retention)設定では400エラーになり得ます。企業契約の例外は、推測せずAnthropicのアカウント担当へ確認してください。
品質を保てるならHaiku 4.5で待ち時間と費用を下げる
短い問い合わせ分類、定型フィールドの抽出、簡潔な振り分けなどでは、Haiku 4.5とSonnet 5を比較します。Haiku 4.5へ替える条件は「処理が簡単そう」ではなく、重要な誤分類を増やさず、必要な出力形式を保ち、p95待ち時間または1件当たり費用が許容値を下回ることです。
manual extended thinkingを使うHaiku 4.5と、adaptive thinkingを使うFable 5 / Opus 5 / Sonnet 5では、thinkingの設定方法と消費tokenが同じではありません。モデル間で入力tokenと出力tokenを固定した机上比較だけで、本番費用を確定しないでください。

モデル名ではなく、同じ評価セットで得た品質・待ち時間・費用の証拠を切り替え条件にします。
単価表を月額の概算へ変換する
通常料金での基準額は、次の式で計算できます。
text月額の概算 = 入力 MTok × 入力単価 + 出力 MTok × 出力単価 + キャッシュ書き込み・ツールなどの追加分
たとえば、月間10 MTokを入力し、2 MTokを出力する処理を、全モデルで同じtoken数になると仮定します。
| モデル | 入力分 | 出力分 | 月額の基準額 |
|---|---|---|---|
| Fable 5 | 10 × $10 = $100 | 2 × $50 = $100 | $200 |
| Opus 5 | 10 × $5 = $50 | 2 × $25 = $50 | $100 |
| Sonnet 5(標準) | 10 × $3 = $30 | 2 × $15 = $30 | $60 |
| Sonnet 5(8月31日までの導入価格) | 10 × $2 = $20 | 2 × $10 = $20 | $40 |
| Haiku 4.5 | 10 × $1 = $10 | 2 × $5 = $10 | $20 |
これは単価差だけを見る基準計算です。実際には、モデルごとにtokenizer、thinking、生成の長さ、修正のための再実行回数が変わります。本番トラフィックでは、各候補の請求tokenと成功件数を記録し、1件の合格出力を得る費用で再計算します。
PricingのキャッシュとBatchの説明では、Batch APIは入力・出力が50%割引、prompt-cache hitは標準入力価格の10%です。一方、cache writeには通常入力より高い倍率がかかります。処理が各機能の条件を満たし、正しく実装できる場合に限り、「通常」「キャッシュ適用」「Batch適用」を別シナリオとして比較してください。割引を無条件に重ねて「必ず半額」「常に90%削減」とは計算できません。

価格は2026年8月10日確認。Sonnet 5の導入価格は2026年8月31日までで、9月1日から標準料金になります。
Model IDを替える前に、400エラーと挙動差を確認する
Sonnet 4.6からSonnet 5への移行は、Model IDを claude-sonnet-5 に置き換えるところから始められます。ただし、Sonnet 5のWhat's newが示すように、manual extended thinking、既定値以外の temperature、top_p、top_k は拒否されます。adaptive thinkingは既定で有効になり、tokenizerの変更によってtoken数も変わり得ます。「IDだけ替えれば挙動も料金も同じ」ではありません。
変更前に、リクエストと運用の両方を確認します。
- 使用中のModel IDと、切り戻し先の固定ID
temperature、top_p、top_k、thinking設定の互換性- 最大出力、context window、タイムアウト、出力検証の上限
- ZDRとdata retentionの要件、企業契約上の例外
- 400エラー、refusal、空出力を区別して記録する監視
- Model deprecationsで確認したAnthropic API上のActive状態と廃止予定
小さな割合のトラフィックから切り替え、400エラー、品質、待ち時間、token数、費用を確認してから対象を広げます。BedrockやGoogle Cloudを使っている場合は、Anthropic APIの廃止日をそのまま適用せず、各クラウドのライフサイクルも確認してください。
1つの会社でも、処理ごとに選択を分ける
日本のSaaSチームが「Claudeを使う処理」をまとめて1モデルへ統一するとします。実際には、問い合わせ分類と、長い障害報告から修正案を作る処理では、失敗の意味が違います。
問い合わせ分類では、Haiku 4.5とSonnet 5を比べます。典型的な問い合わせだけでなく、複数カテゴリにまたがる例、短すぎる例、誤分類すると優先対応を逃す例も含めます。出力形式の遵守、重要カテゴリの見逃し、p95待ち時間、1件当たり費用を記録します。
障害報告からの修正案作成では、Sonnet 5を基準に、合格しなかった難しい報告だけをOpus 5とFable 5でも評価します。根拠のない変更を提案していないか、制約を落としていないか、人が何回修正したかを確認します。Fable 5では保持要件も合格条件に含めます。
この例に架空の勝率やレイテンシ値は置けません。記入すべきなのは、自社の入力で観測した値です。同じ会社でも、誤りの損失と処理時間が違えば、適切なモデルが違って構いません。
そのまま使える最終評価チェックリスト
公式ドキュメントでModel IDとActive状態を再確認したら、自社の代表入力を20〜50件程度選び、Sonnet 5を基準に候補を同条件で評価します。件数は小規模な比較を始める目安であり、安全性や統計的な十分性を保証する数字ではありません。高リスクな判断に使う場合は、より厳しい評価と該当分野の専門家確認が必要です。
- 対象がAnthropic直提供のClaude APIか、クラウド事業者経由かを記録した
- 正式なModel ID、Active状態、廃止予定、切り戻し先を確認した
- 通常料金と請求期間を記録し、Sonnet 5の導入価格を恒久単価にしていない
- 入力・出力・thinkingの実請求tokenを候補ごとに記録した
- prompt cachingまたはBatch APIの適用条件を満たすか確認した
- unsupported parameterとthinking設定を確認し、400エラーを監視した
- ZDR、data retention、監査上の条件を確認した
- 同じ入力と合格条件で、品質、p95待ち時間、修正回数を比較した
- 1件当たり単価ではなく、1件の合格出力を得る費用を計算した
- 結果が事前に決めた基準を超えた場合だけ、対象トラフィックを広げる
最終判断は、公式の位置づけではなく自社の評価結果で行います。迷うならSonnet 5から始め、品質不足の損失、待ち時間、実請求額のどれが問題かを特定し、その問題を解消できた候補へだけ切り替えてください。



