2026年8月10日時点で、新規開発の第一候補は安定版の gemini-3.6-flash です。Googleが本番向けモデルとして掲載しており、汎用処理の標準候補にできます(Gemini API changelog、Gemini 3.6 Flashのモデル仕様)。
処理量が多く、単価を強く抑えたいなら、同じく安定版の gemini-3.5-flash-lite が候補です(Gemini API changelog、Gemini 3.5 Flash-Liteのモデル仕様)。難しい推論や複雑なツール利用を優先し、仕様変更にも追随できる案件では gemini-3.1-pro-preview を検討します。ただしこれはプレビュー版で、安定版より変更・廃止リスクが高いため、本番の無条件な既定値にはしません(Gemini 3.1 Pro Previewのモデル仕様、Geminiのモデルとバージョン方針)。
この結論は品質を横並びで実測したランキングではありません。公式のモデル契約、料金、ライフサイクルから導く選択の出発点です。最後は自社の代表入力で、受理できる出力に至るまでの再試行、出力トークン、ツール呼び出し、修正時間も含めて決めます。
比較するのは「多様な入力からテキストを返す」汎用モデル
ここで扱う3モデルは、テキストに加えて画像、動画、音声、PDFを入力でき、返すのはテキストです。つまり「マルチモーダル」は多様な形式を読み取れるという意味で、画像や音声を直接生成するという意味ではありません。画像生成、動画生成、TTS、embedding、Live APIが主目的なら、同じ表で選ばず、Gemini APIの公式モデル一覧から用途に対応する専用モデルを確認してください。
また、安定版のモデル ID は通常変更されないため、本番で参照先を固定したい場合に向きます。これは出力品質や挙動が将来にわたって不変という保証ではありません。プレビュー版は新しい能力を早く使える一方、変更や廃止への追随が必要です。以下の金額はGemini Developer APIの有料枠 Standard における米ドル建てリスト価格で、税、context caching、Grounding、Batch/Flex、Priority、無料枠、レート制限、地域差、第三者経由の料金は含みません。
まずは3モデルをこの条件で絞る
3モデルはいずれも入力上限が1,048,576トークン、出力上限が65,536トークンです。ただし、同じ上限だから同じ仕事に向くとは限りません。状態、単価、長いプロンプトの価格条件を一緒に見ます。
| モデル ID | 状態 | 最初に試す仕事 | Standard入力 | Standard出力 | 選択を変える条件 |
|---|---|---|---|---|---|
gemini-3.6-flash | stable | 新規本番の汎用処理 | $1.50 | $7.50 | 単価が支配的ならFlash-Lite、難しいケースで受理率が足りなければProを評価 |
gemini-3.5-flash-lite | stable | 大量分類、抽出、定型処理など、コスト重視の処理 | $0.30 | $2.50 | 再試行や修正が増え、受理可能な出力当たりの負担が逆転する場合 |
gemini-3.1-pro-preview | preview | 複雑な推論やツール利用を優先する案件 | $2.00(200k以下)/$4.00(200k超) | $12.00(200k以下)/$18.00(200k超) | previewを固定運用できない、または高い出力単価に見合う改善がない場合 |
単価はすべて100万トークン当たりで、出力料金にはthinking tokensが含まれます。3.6 Flashの$1.50/$7.50、3.5 Flash-Liteの$0.30/$2.50、3.1 Pro Previewの200kを境に変わる料金は、同じ公式料金表の該当モデル欄で確認できます。各モデルの入出力上限と対応形式は、3.6 Flash、3.5 Flash-Lite、3.1 Pro Previewの仕様に基づきます。

入力単価だけでなく、受理できる出力までの費用を見る
料金表から分かるのは、トークン単価です。実運用の総負担は、同じ結果を得るために何回呼ぶか、どれほど長い出力になるか、ツール呼び出しが何回必要か、人がどれだけ修正するかで変わります。入力単価が低いモデルでも再試行が増えれば、最終的な差は縮まります。
特に gemini-3.1-pro-preview は、プロンプトが200kトークンを超えると入力だけでなく出力の単価も上がります。長いPDF群や大量の会話履歴を毎回渡す設計では、「最大コンテキストに収まるか」だけでなく、「通常の呼び出しが200kを越えるか」を先に見積もる必要があります。履歴を毎回全量送る前に、必要部分の抽出、要約、context cachingの適用可能性を別途検討してください。ただし、context cachingの料金は上表とは別です。
簡単な比較では、代表入力を小さく固定し、各候補について次を記録すると判断しやすくなります。
- 一度で受理できた件数
- 受理までに必要だった再試行回数
- 入力・出力トークン数
- ツール呼び出し回数と失敗内容
- 人が直した時間
この記録はモデルの普遍的な順位を作るためではなく、自分の処理で既定値を決めるためのものです。正解率だけを見て、修正時間や出力トークンを落とすと、料金表と本番費用が噛み合わなくなります。
安定版、プレビュー版、latestでは運用方法が違う
本番コードでは、選んだ正確なモデル ID を固定します。Googleのモデルバージョン方針では、安定版の ID は通常変わらず、プレビュー版は少なくとも2週間前の通知で廃止される場合があります。一方、latest エイリアスは安定版、プレビュー版、試験版の間でも参照先が切り替わり得ます。再現性を重視する本番で latest を固定 ID の代わりに使うと、コードを変えていなくても参照先が変わる余地が残ります。
2026年8月10日の確認時点では、gemini-3.6-flash、gemini-3.5-flash-lite、gemini-3.5-flash、gemini-3.1-pro-preview に終了日は告知されていません。ただし、これは恒久提供の保証ではありません。Gemini API deprecationsでは終了予定と移行先が更新されるため、導入時と定期見直し時にchangelogと併せて確認します。

gemini-3.1-pro-preview-customtools は gemini-3.1-pro-preview の別名ではありません。bash やカスタムツール向けに分かれた専用モデル ID です。通常の Pro Preview を使うコードで、名前が似ているという理由だけで置き換えないでください。必要性と対象ワークロードは3.1 Pro Previewのモデルページで確認します。
APIキーをコードに書かず、正確なIDで最小呼び出しを作る
Googleは最新の機能やモデルへのアクセスにはInteractions APIを推奨していますが、generateContent も公式に文書化されています(最新モデルと移行の案内)。既存実装との整合性を優先する場合は、まずGoogle Gen AI SDKの generate_content で正確なIDを固定し、必要な機能がInteractions APIにしかないと確認できた時点でAPI選択を見直せます。
APIキーは環境変数 GEMINI_API_KEY へ置き、ソースコードやリポジトリには書きません。Python版Google Gen AI SDKを使う最小例です。
bashpython -m pip install -U google-genai
pythonimport os from google import genai client = genai.Client(api_key=os.environ["GEMINI_API_KEY"]) response = client.models.generate_content( model="gemini-3.6-flash", contents="次の問い合わせを、要点・確認事項・回答案の3項目に整理してください。", ) print(response.text)
gemini-3.5-flash-lite や gemini-3.1-pro-preview を評価する場合は、model の値だけを正確な ID へ差し替え、入力と受理条件は同じにします。利用可能なモデルを確認する際は SDK の models.list を使えますが、一覧に表示されることと、自分のプロジェクトのレート制限、地域条件、必要機能を満たすことは別です。
既存の3.5 Flashは3.6への移行対象として比べる
すでに gemini-3.5-flash を使っている場合は、新規候補を四つ並べるより、gemini-3.6-flash への移行として判断すると整理しやすくなります。Googleの移行案内では、Standard料金は3.5 Flashが入力$1.50、出力$9.00、3.6 Flashが入力$1.50、出力$7.50です。Googleはコード生成、エージェント型・マルチモーダル処理、トークン数、ターン数、ツール呼び出し数の改善も説明していますが、これはGoogleによる説明であり、個別ワークロードの品質や速度を保証する独立ベンチマークではありません。
移行時はmodel IDだけを一括置換せず、次の順に確認します。
- 現在の本番入力から、成功例だけでなく失敗例と境界例を含む小さな評価セットを作る
- 3.5 Flashと3.6 Flashで、生成設定、ツール、受理条件を揃える
- 出力の受理率、トークン、ツール呼び出し、修正時間を比較する
- 構造化出力、関数呼び出し、停止条件、エラー処理が既存コードと合うか確認する
- 一部トラフィックから切り替え、想定外の差がなければ既定値を更新する
3.6 Flashの出力単価が低いという事実だけで移行完了とは判断できません。既存のプロンプト、ツールスキーマ、JSONの後処理まで含め、受理可能な出力が同じ条件で得られることを確認して初めて置き換えられます。
最終決定は三段階で十分
まず gemini-3.6-flash を正確なIDで試します。代表入力の品質要件を満たし、処理量と単価が支配的なら gemini-3.5-flash-lite でも同じ評価を行います。Flash系で受理可能な出力に届かず、previewの更新対応と高い出力単価を受け入れられる場合に限り、gemini-3.1-pro-preview を追加します。
選択後も latest エイリアスへ置き換えず、固定したモデル ID、確認日、評価入力、受理条件を残します。導入前と定期見直し時には models.list、changelog、deprecationsを確認してください。画像生成、動画、Live API、TTS、embeddingが中心なら、ここで選んだ汎用モデルを流用せず、公式モデル一覧から専用モデルへ切り替えるのが次の一手です。



