Gemini APIには2026年も無料枠があります。変わったのは、無料枠そのものよりも「正しい答えをどこで読むべきか」です。単純に「今もお金を払わずにGemini APIを叩けるのか」が知りたいなら、答えは yes です。けれども「RPM / TPM / RPD の固定表が公開されていて、それをそのまま契約として使えるのか」という意味なら、もうそうではありません。
現在のGoogle公式ドキュメントは、この答えを複数のページに分けています。Pricing page は、どのモデルに今も無料のAPI料金があるかを示します。Rate limits page は、全体に共通するルールを説明しつつ、実際の active limits は AI Studio で確認するよう案内し、公開されている limit が保証値ではないと明記しています。Billing page は、2026年3月以降の prepay / postpay の実務を説明します。Terms は、技術的に無料で使えても、法務やデータ処理の観点では正しい契約ではないケースを示します。
エビデンス注記: この記事は pricing、rate limits、billing、terms、Gemini 3 docs を 2026年3月29日に確認して作成しています。
まず結論
| 質問 | 現在の答え |
|---|---|
| Gemini APIに今も無料枠はある? | ある。 |
| 公開された固定表をそのまま最終的な上限として使える? | 使えない。現在のrate-limits docsはAI Studioでの確認を前提にしており、公開limitは保証値ではない。 |
| 現在の3系テキストルートで無料なのは? | gemini-3-flash-preview、gemini-3.1-flash-lite-preview、そして pricing page 上では gemini-3.1-flash-live-preview も無料料金として記載されている。 |
gemini-3.1-pro-preview は無料APIか? | いいえ。AI Studioで試すことはできるが、APIは paid-only。 |
| 2.5系にまだ無料モデルはある? | ある。現在のpricing pageでは gemini-2.5-pro、gemini-2.5-flash、gemini-2.5-flash-lite に free pricing が残っている。 |
| いつ無料枠をやめて paid に切り替えるべき? | gemini-3.1-pro-preview や image preview モデルが必要なとき、より安定した capacity が必要なとき、paid-service のデータ処理が必要なとき、または EEA / 英国 / スイス向けに公開するとき。 |
一番大きく変わったのは数字ではなく、答えの置き場所
古いGemini無料枠の記事の多くは、話の中心を1枚の公開表に置いていました。以前はそれでも理解しやすかったのですが、現在の rate-limits page は契約の置き方が違います。今でも次のような重要なルールは確認できます。
- 制限は RPM、TPM、RPD のような軸で評価されること
- quota は API key ではなく project に対して適用されること
- requests per day は Pacific Time の深夜にリセットされること
- preview / experimental モデルはより厳しいこと
- 高い usage tier ほど大きな limit を持つこと
ただし、そのページはもう「全員に通用する1枚の固定カード」を答えとしては扱っていません。代わりに AI Studio の rate limit view を見るように案内し、公開された limit は保証値ではなく、実際の capacity は変動しうると書いています。
ここが、2026年の無料枠記事で最も重要な修正点です。いま「Gemini API無料枠の制限」と言うとき、本当は2つの別の質問があります。
- どのモデルが今も無料の API pricing を持っているのか
- 自分の project で、そのモデルにどの active limits が出ているのか
前者は公開docsが答えます。後者はAI Studioが答えます。

だから、古い表をそのまま launch の前提にするのは危険です。歴史的スナップショットとして読むのは構いませんが、現在の契約として読むべきではありません。今の正しい順番は、pricing page で対象モデルの無料可否を確認し、その後に AI Studio で現在の project の live quota を見ることです。
いま実際に無料なのはどのモデルか
2026年3月時点で最も役に立つ公開情報は、大きな quota table ではなく、モデル可用性のマップです。Googleの pricing page と Gemini 3 guide を合わせると、実務上の整理はこうなります。
| モデル | Gemini APIで無料か | 実務上の意味 |
|---|---|---|
gemini-3-flash-preview | はい | 現在の3系で高速な汎用 free route。 |
gemini-3.1-flash-lite-preview | はい | 3.1系で最も安く、高頻度処理向けの free text route。 |
gemini-3.1-flash-live-preview | はい | Live API 向けで、pricing page では free pricing が記載されている。 |
gemini-2.5-pro | はい | 3.1 Pro を使わずに強めの reasoning が欲しい場合の重要な無料 fallback。 |
gemini-2.5-flash | はい | 成熟した汎用 route で、現在も free pricing がある。 |
gemini-2.5-flash-lite / preview | はい | 安価で throughput 重視の 2.5 系 free route。 |
gemini-3.1-pro-preview | いいえ | AI Studio では試せるが API は paid-only。 |
gemini-3.1-flash-image-preview | いいえ | 現在の image preview モデルは有料。 |
gemini-3-pro-image-preview | いいえ | より高品質な image preview も有料。 |
ここで最も危険なのは、「AI Studioで試せる」を「APIで無料」と言い換えてしまうことです。Google自身の Gemini 3 guide は、gemini-3.1-pro-preview に free API tier がないことを明記しています。もし本当に知りたいことが「Gemini 3.1 Pro を backend から無料で呼べるか」なら、答えは no です。そこを詳しく見たいなら、こちらの Gemini 3.1 Pro free API guide を使ってください。
もうひとつの誤読は、現在の 3.x ルートを全部同じカテゴリだと思うことです。通常の text / multimodal backend なら主役は gemini-3-flash-preview と gemini-3.1-flash-lite-preview です。音声中心のプロダクトなら、見るべきは通常の text API ではなく Live API contract であり、その場合の中心は gemini-3.1-flash-live-preview です。詳細は Gemini 3.1 Flash Live guide で別に整理しています。

この図が quota table より重要なのは、そもそも無料の話をしてよい対象なのかを最初に分けてくれるからです。必要なモデルが API で無料ではないなら、その後の RPM / TPM 議論は最初の論点ではありません。
生の数字より重要な無料枠の制約
クォータは key ではなく project に紐づく。 これは rate-limits docs に明記されています。同じ project の中で API key を増やしても、無料枠のプールが増えるわけではありません。
RPD は Pacific Time の深夜にリセットされる。 これはグローバル運用では意外に重要です。ローカル時間での「今日」ではなく、PT で日次の境界が決まります。
無料枠は data-handling contract でもある。 Gemini API terms では、unpaid quota は unpaid service です。Google は unpaid usage の prompts や responses を自社製品の改善や開発に使う場合があり、human reviewers が処理する場合もあると説明しています。実データや顧客データを扱うなら、ここは小さな注意書きではありません。
EEA、英国、スイス向けの user-facing app では paid services が必要。 Billing FAQ を読むだけだと「free tier も paid tier も多くの地域で利用可能」と見えますが、terms がより強い境界を置いています。EEA、英国、スイスのユーザー向けに API client を提供するなら paid services のみです。つまり「技術的に free tier が見える」と「そのまま公開できる」は別の話です。
Preview はそのまま production suitability を意味しない。 Terms では preview サービスを production use に使えないとしています。しかも現在の魅力的な Gemini 3 ルートの多くはまだ preview です。quota が足りて見えても、契約としてはまだ production 向きとは限りません。
この節の要点を一行で言うなら、無料枠の判断は単一の数字ではなく、live quota、モデルのライフサイクル、データ処理、地域要件の組み合わせで決まるということです。
2026年の paid tier はどう変わったか
2026年3月以降、paid tier の現実は古い記事とかなり違います。現在の billing page によれば、新しいアカウントは Free tier から始まり、paid tier に入るには billing account を紐づけ、Google の current billing flow を通る必要があります。そこには prepay と postpay が入っています。
現時点の公開 tier ラダーは次のとおりです。
| Tier | 現在の条件 | 変わること |
|---|---|---|
| Free | Active project または free trial | 一部モデルのみ、unpaid-service data handling、低い quota ceiling |
| Tier 1 | billing account を紐づけて paid setup を完了 | より高い limit、paid-service data handling、paid-only モデル |
| Tier 2 | 累計 \$100 の spend と初回成功支払いから 3日 | より高い quota ceiling と cap |
| Tier 3 | 累計 \$1,000 の spend と初回成功支払いから 30日 | 最高 tier、postpay へ移行できる可能性、さらに大きい cap |
旧記事が拾えていない重要な差分が prepay です。現在の billing guide は、paid setup に prepay が必要になる場合があり、最低 \$10 の credit purchase が求められる場合があると書いています。さらに prepay balance が \$0 に落ちた場合、その billing account にぶら下がる Gemini API サービスは同時に止まる可能性があります。つまり、2026年の「billing を有効化した」は、それだけでは十分な運用説明になりません。

このため、昔の「billing を付ければ終わり」という助言はもう足りません。tier、rate limits、billing cap は billing account 単位で決まり、project を別の billing account に移すと、それらも一緒に切り替わります。
実際の limit をどう確認するか
安全な手順は短いです。
- AI Studio の rate limit view を、実際に使う project で開く。
- 抽象的な「Gemini free tier」ではなく、使うモデルの行を確認する。
- AI Studio billing page や projects page で、その project が Free なのか Tier 1 なのか、あるいは paid flow だが prepay が尽きているのかを確認する。
- launch 前に RPM / TPM / RPD を記録し、billing や project を変えた後にも再確認する。
これが地味ですが一番重要です。もし 429 RESOURCE_EXHAUSTED が増え始めたら、その時点では quota の説明だけでなく、モデルの行、billing 状態、project 境界を順に見直すべきです。
要するに、現在の Gemini free tier contract において AI Studio は単なる playground ではなく、「自分の project の今の答え」を見る場所です。
無料枠で十分な場面と、もう十分ではない場面
無料枠が今でも十分に役立つのは、負荷が infrastructure より evaluation に近い場合です。prompt テスト、内部デモ、低リスクな prototype、PoC agent、学習用途、小さな個人ツールなどがここに入ります。また、モデル選定のために使う価値もまだ高いです。gemini-3-flash-preview と gemini-3.1-flash-lite-preview を比較したい、あるいは gemini-2.5-pro がまだ十分かを見たい、といった用途です。
一方で、無料枠が不適切になるタイミングは想像より早いです。最初の境界はモデルアクセスです。gemini-3.1-pro-preview や現在の image preview モデルが必要なら、もう paid territory です。次の境界は contract quality です。paid-service の data handling、EEA / 英国 / スイス向け公開、より安定した quota contract が必要なら、free tier は技術的に動いても、運用上はもう正しい選択ではありません。
実務上の判断ルールはかなりシンプルです。
- 学習、検証、低リスクな用途で free-capable model を使うなら、free tier を使う。
- paid-only model、より厳格なデータ処理、欧州公開、より強い quota contract が必要なら、paid に移る。
FAQ
gemini-3.1-pro-preview は無料 API ですか。
いいえ。Gemini 3 docs は、AI Studio で試せることと、Gemini API に free tier があることを明確に分けています。gemini-3.1-pro-preview に free API tier はありません。
Gemini 2.5 Pro はまだ無料ですか。
2026年3月29日に確認した current pricing page では、はい。gemini-2.5-pro には依然として free input / output pricing が残っています。
Billing を有効化すると、Google は prompts を製品改善に使わなくなりますか。
Paid services と unpaid services は terms 上で扱いが分かれています。paid services は unpaid quota と同じ形では製品改善に使われません。ただし、2026年の billing 現実では、billing を有効化するだけでなく prepay setup と positive balance が必要になる場合があります。
欧州向けプロダクトで free tier は使えますか。
EEA、英国、スイス向けの user-facing API client については paid services が必要です。free tier が見えていても、それは公開向け contract とは限りません。
1M token context は free tier でも使えますか。
モデル次第です。Google の billing FAQ は、AI Studio、一部の無料モデル、postpaid plans で 1M token context を試せると書いています。最終的には pricing page と AI Studio quota view で対象モデルを確認するのが安全です。
実務上の結論
Gemini API の無料枠は 2026年も存在します。ただし、もう1枚の公開数表では説明できません。現在の安全な順番は次のとおりです。
- pricing page で、そのモデルが本当に無料 API ルートかを確認する。
- AI Studio で、自分の project の active limits を確認する。
- billing page で、paid に移ると何が変わるかを確認する。
- terms で、その free tier が自分の法務・privacy・deployment 条件に合っているかを判断する。
この順番で読めば、Gemini の無料枠はかなり整理して理解できます。まだ役に立ちます。ただし、もはや固定の万能契約として扱うべきものではありません。
